半田晴久/深見東州 産経新聞連載 第3回「受験地獄3」

良い環境整えてやることが親の務め

 「受験」は大学、高校の入試を示す言葉でした。しかし、今では状況が変わっています。

 

 六年生の中・高一貫教育を実施している名門私立校では、中学校や高校の段階で、受験生が殺到しているのが現実です。最近では、さらに受験年齢が下がって「お受験」と呼ばれる幼稚園受験が関心事になっています。

 

 なぜ親たちは厳しい競争を知りつつも、子供を名門校に向かわせるのでしょうか。

 

 そこには親の虚栄心もあれば、エスカレーター式の学校で、子供に一回分の受験負担を軽くしてやりたい、と願う親心も働いているに違いありません。いえることは、動機は別として、名門校に向かわせる親たちの選択は、決して間違ってはいないということです。

 

 教育ジャーナリストの中には、全く逆のことを言う人もいますが、孟母三遷(孟子の母は、孟子を良い学校に入れたい、と住居を二回変えた)の例えがあるように、親の務めとは、子供のために良い環境を整えてやること。つまり、子供によい受験校を選択してあげることだと思います。

 

 子供は一般的に、高校一年の終わりぐらいから、親の言うことを聞かなくなるものです。自我意識を持つ年代になるからです。逆の書い方をすれば、それまでは、親の意見や励ましに従いますので、特に受験では「高校受験までは放任せず、親も積極的に干渉すべきだ」というのが私の考えです。

 

 もっと極論すると、受験の低年齢化が進む中で、幼児期のしつけ、教育が重要になってきます。三歳までに「わがままは通らない」という厳しいしつけ教育を受けた子供は、概して素直です。親や先生の言うことを素直に聞いて、真面目に勉強するので、私の知る限りでは、名門校にすんなり合格しています。

 

 ですから、幼児期に「しつけ」のタイミングを外し、わがままに育った子供を「勉強しなさい」と、口を酸っぱくして言っても、聞く耳を持たないはずです。親が名門私立を目指させても結果は、受験を放棄するか失敗している場合が多いはずです。このようなケースが、周囲から見ていても痛々しく感じられます。

 

 義務教育の段階では、このような状態を察したときは無理に受験を強いらず、本人が「ぜひ受験をしたい」と思う、高校や大学受験の時まで待つべきです。

 

みすず学苑 半田晴久

2003年3月13日 産経新聞