半田晴久/深見東州 産経新聞連載第12回「家庭の教育3」

親はまず、わが身を見つめ直すこと

 子供にやる気を起こさせるには、一人の人間と認めたうえで焦らないことが一番です。じっくりと、その子に合った接し方を研究し、常に明るく前向きに励ますことが肝心なのです。

 

 しかし、それだけでは十分とはいけません。言葉を尽くしても、そこに説得力がなければ、子供が親の耳を傾けることはないでしょう。ここでいう説得力とは、日常における母親の生活態度のことです。

 

 母親にすれば、腹立たしいほど子供が親に対して無関心と見えるかもしれません。だが、子供たちは冷静に両親を観察しています。特に、母親に対しては、その言葉と実際の行動を重ね合わせているのです。

 

 私のところに相談にくる母親にも、「勉強をせずテレビばかり見ています。いったい誰に似たのでしょうか」と嘆く人が、少なくありません。私はその言葉を耳にするたびに苦笑し、のど元まで出かかった言葉を飲み込んでいます。「“灯台下暗し”。お子さんはあなたにそっくり…」

 

 実際は、そういう母親に限って、テレビばかりを見ている生活。新聞でみた統計でも、テレビを見る平均時間は母親の方が、子供より圧倒的に多いのです。

 

 時代とともに母親の関係は変質を続けていますが、子供が両親の背中を見て育っていることに変わりはありません。かつて、親たちは、生活の糧を求めるのに手いっぱいで、子供の教育を考える余裕もない時代がありましたが、そんな時代でも、子供は良心の期待に応えようと、勉強に精を出していたものです。

 

 それは、時代に関係なく、今も同じです。両親が毎日を懸命に生きている家庭の子供は、おおむね親との関係も良好で、大人の言葉にも素直に耳を傾けます。ただし、良心は仲良く、コミュニケーションが確かで、両親自身が子供時代に、たっぷりと両親の愛情を感じていた、という大前提はありますが…。

 

 ところで、多少きつい言い方になるが、経済的に余裕ができると、母親の生活態度も、怠情に流れていく傾向があることも否めないようです。そんな家庭環境では、差こそはあれ、子供にも怠け癖がついているものです。

 

 まさに“子は親の鏡”。子供のやる気を喚起したいのなら、まずはわが身をとくと見つめなおしてみることです。

 

みすず学苑 半田晴久

2003年5月15日  産経新聞