半田晴久/深見東州 産経連載第25回「志望校選択2」

ランクを下げると努力への気概弱まる

 夏期講座など、受験勉強も佳境に入っていることでしょう。前回の「浪人も選択肢」について、もう少し説明したい、と思います。

 

 受験に保険を掛ける、との考え方は、受験の趣旨から離れています。受験校の選択は、子供がどの道に進むのか、その針路に沿って決めるのが、本来の姿です。

 

 滑り止め校を用意しないで、夢を捨てずに浪人選択の道を選んだとしても、落後者ではありません。誰も好んで浪人の道は選びません。本人にすれば、浪人生活は屈辱だけのものでしょう。無事、大学に入学し、勉強に遊びにわが世の春を謳歌している友人たちを横目に、勉強漬けの日々を強いられるのですから…。

 

 だからといって、親が世間体などを考え、滑り止め校選択を無理強いするのは、避けなければなりません。

 

 浪人生活は、苦しく、「どうして自分だけが、こんなに苦しい思いをしなくてはならないのか」と、世を嘆きたくもなり、ヤケを起こして、すべてを投げ出したくなることだってあります。そうならないために、この時期、遊びたい気持ちや暑さに耐えて、受験勉強に集中しなければいけないのです。また、・保険・を用意すれば、受験勉強もそれに合わせたものになり、結果、二兎を追う者は一兎も得ず、になりかねません。

 

 この時期に、浪人を勧めるようなことを書くのは不謹慎との批判もあるでしょうが、実は、秋になると、模擬試験などの成績に、本人も親も不安になって志望校を下げる受験生が急増するのです。予備校での実績をみても、胸突き八丁といえる時期に、志望校を下げると、懸命に努力する気概が弱まり、ランクを下げた志望校にも合格できなかった受験生が多いのです。

 

 だから、秋には絶対に志望校を下げたらだめなのです。いや、志望校は最後まで下げてはいけません。不安ならば、入試直前に、いろんなランクの大学も併願受験すればよいだけなのです。その方法が、一番成績が伸びて、自分にとってベストの受験ができる秘訣です。あえて、浪人を恐れず、志望校にチャレンジするようアドバイスしているのは、そこに私の本心があるのです。

 

 「狭き門より入れ」

 

 志を高く持ち続けるわが子を親は誇りに思い、応援し続けてください。

 

 

みすず学苑 半田晴久

2003年8月14日  産経新聞