半田晴久/深見東州 産経連載第33回「大学進学の勧め」

学歴コンプレックスに悩まぬためにも

 この時期の受験生心理は、闘争心も萎えて、受験勉強そのものから逃げ出したくなるようです。とりわけ浪人生から「大学進学は、そんなに重要なのか」の疑問が頭を過り、逃避したくなることが多い、との体験談を聞きます。

 

 そのような兆候が受験生に見受けられる場合には、もう一度、親も一緒に進学の目的や意義を話し合い、激励することが大事です。

 

 私は、そのような学生には、実社会における学歴の存在意義を説いて、進路指導しています。

 

 昨今、学歴偏重、終身雇用、年功序列といった日本型形態は崩壊し、実力本位型が到来した、との話を耳にします。確かに「大卒」の肩書きは以前ほどの輝きを持っていませんし、学歴自体それほど大きな意味を持たなくなった、と実感します。でも、学歴不問の社会になったわけではありません。

 

 周囲にも、学歴コンプレックスを抱いている人は少なくありません。当人しか分からない心の問題だけに深刻です。そのことで、他人の・目・を意識するあまりに、萎縮しているとしたら残念でなりません。

 

 体験論ですが、いくら「実力社会。学歴で悩むことはないよ」と励ましても、多くは「大卒だからそんなことがいえるんです。やはり限界がありますよ」との言葉が返ってくる。有能な人ほどその傾向が強いように見受けられます。これは当人にとって大変なエネルギーの損失ですし、肝心要の勝負どころで消極的になって、あたら才能を開花できずに終わってしまったら、これほど不幸なことはありません。将来、学歴コンプレックスに悩まずに済むことも、大学に進学するメリットなので「可能な限り進学を」と勧めている理由です。

 

 以前にも述べたように、大卒者の違いは専門書を読みこなす力、論述力、人の意見に耳を傾ける知的許容力を身につけているかの三点ぐらい。それは大学で一生懸命に勉強してこそ習得できるもので、そうでない大卒者は、実力的に高卒者と大差ありません。

 

 周囲が高卒をマイナス面で評価することは、当人が思っている百分の一もない、と思います。ましてや、ビジネスに限らずいかなる場合も、学歴ゆえの障壁があってはなりません。その点は誤解のないように願いたい。

 

 

みすず学苑 半田晴久

2003年10月9日  産経新聞