半田晴久/深見東州 産経連載第21回「受験に備えて3」

父親も教育現場に積極参加を

 子供は成長に伴い自分の世界を広げ、人間関係の重点も親から友人へと移っていきます。

 

 当然のことながら、両親の影響力も学年が上がるに従って小さくなっていき、高校生ともなるとオーバーかもしれませが、限りなくゼロに近づいていきます。

 

 ある調査によると、高校生の年代が、影響を受けるのは、一に先輩、二に友人。三番目にテレビや雑誌などを通じてのタレントの発言で、その次に、予備校の講師や学校の先生など。まれに何事も親でないと駄目な子供もいますが、両親の話に耳を傾けるのは「最後に」が一般的のようです。

 

 だからといって、両親はただ手をこまねいているだけで、よいわけではありません。親子のコミュニケーションが豊かで、高校生になっても、父親の言葉によく耳を傾ける子供もいます。それができている家庭は、受験に対する問題も少ないのです。

 

 ところが、最近の風潮は、都市部に限らず、父親不在の夕食が多く、加えて、各自の部屋でテレビを見ているなど、家庭内のコミュニケーションも薄くなるばかり。子供が父親から教わる社会習慣や常識なども、大きく欠落するケースが目立っているのが現状です。東京都が行った家庭教育のアンケートを見ると、子供の教育に、父親が積極的に参加することを求める声が圧倒的に多かったことでも、それを裏づけています。

 

 父親が教育に関心を持つことが、受験だけでなく教育現場にも大変に重要なことなのです。

 

 私の中学(兵庫県西宮市)三年時の恩師は、後に兵庫県芦屋市の教育長を務めた人ですが、私の卒業直後に、隣の芦屋市の中学校教頭に赴任しました。当時最も荒れていた学校でしたが、数年間で見事に学級崩壊を解決されたのです。その決め手の一つが、父親の会(後でわかったことですが全国で二番目)を創設し、教育現場に父親も積極的に参加してもらったこと。後日そう言っておりました。このように父親と子供との豊かなコミュニケーションを作る環境にすることで、多くの問題を解決する糸口が見つかると思うのです。

 

 小言や説教をするのではなく、子供の立場を認め、まずは腹を立てずに子供の話を聞いてやる。そこからコミュニケーションも生まれる、と思うのです。

 

 

みすず学苑 半田晴久

2003年7月17日  産経新聞