半田晴久/深見東州 産経連載第23回「受験に備えて5」

徹底して基礎学力を身につけさせる

 受験生は夏休みに入ると、あせりが出てくる。この時期が合否のカギを握るだけに、予備校や塾は夏休み返上の子供たちで熱気に包まれている。

 

 この時期になると、決まって「効果的な受験勉強法を教えて」という声を耳にする。

 

 結論から書くと「受験に限らず、勉強に近道はない」。文部科学省が唱える「ゆとり教育」は、創造性教育に重きが置かれ、地道な基礎学力を軽視している、との疑問をぬぐいきれない。

 

 以前、経済界で大手企業の「これからは知恵(創造性)の時代だ。社員はまず知恵を出せ。知恵を出さない奴は汗を出せ」との社長訓示が、随分もてはやされたことがある。私は、この時の故松下幸之助氏の言葉が脳裏に残っている。

 

 「誰しも、汗水流して働く者より、知恵を出す人間の方がカッコ良く見えるから、知恵を出すことに励むだろう。そうすると、一生懸命努力する者がバカに見えて、社員は努力しなくなる。そんな会社はつぶれるしかないじゃないか」。さすが、ゼロから大松下帝国を築いた苦労人である。事の本質を見極めた言葉といえる。

 

 「会社」を「日本社会」に当てはめてみると、創造性に教育の第一義を置く国は、倒産するしかない? やはり学習、勤勉、努力に教育の第一義を置き、勉強熱心で努力家の子供を育てる教育こそが、国家(文科省)の仕事だと思っている。それが欠けていることが、今の教育の一番大きな問題だと思いませんか。

 

 私の持論でもあるが、学校がやらなければならないことは、まず子供に必要な基礎学力を徹底して身につけさせることです。基礎学力とは読み、書き、計算する能力のことであり、それは松下幸之助氏の言を借りるまでもなく、汗を流して根気よく反復するしかない。子供にとっては、楽しみの少ない、地味で退屈なことなのです。基礎学力を徹底させるには、教育課程の中で、根気や努力、作業などを素直に手と頭を動かして実践することがいかに大切か、を子供に理解させ、習得させることになるのです。これが学校でしかできない最も大切な教育の要諦だと思うのです。

 

 受験は特殊なことではなく、基礎学力が試される場なのです。結果的にも、地道に基礎学力をつけるのが一番の近道になります。

 

 

みすず学苑 半田晴久

2003年7月31日  産経新聞