東京国際コンサート

東京国際コンサート 2013

東京国際コンサート
東京国際コンサート

MOSTLY CLASSIC モーストリークラシック 2014年7月号

東京国際コンサート 6月18日に新国立劇場オペラパレスで開催

ゲストは世界のディーヴァ、ルネ・フレミング

芸術文化の振興と国際交流を目的とする東京国際コンサート(主催・世界芸術文化振興協会)が6月18日(水)、新国立劇場オペラパレスで開かれる。昨年に引き続き2回目の開催となる。今年のゲストは"メトロポリタン歌劇場の華"といわれるアメリカを代表する歌手で、欧米の一流劇場において活躍を続けるソプラノのルネ・フレミング。オペラ・アリアを中心とした素晴らしい声の芸術を聴かせる。

世界水準の芸術を肌で体験

昨年の東京国際コンサートにはニュージーランドの歌姫キリ・テ・カナワに、ニューヨークのジュリアード音楽院卒業生らが出演。世界芸術文化振興協会(IFAC)の半田晴久(深見東州)会長は「世界一流のソリストと、世界一流の学生たちの共演を鑑賞することで、世界水準の歌唱力や表現力、演技がどのようなものかを肌で体験することができます。オペラ歌手や声楽を目指す人にとって、大きなヒントと刺激を受けることでしょう」と話していた。

 

そして今回は、ルネ・フレミング。フレミングはペンシルバニア州で生まれ、ニューヨークで育った。2006年のメトロポリタン歌劇場公演以来8年ぶりの来日になる。今年2月に行われたアメリカのスーパーボウルで、オペラ歌手として初めて国歌斉唱を行った、当代随一のソプラノ歌手。親交のある深見の呼びかけにより、来日公演が実現した。

 

IFACは2009年からジュリアード音楽院オーディションを開催しており、今年は第6回が行われる。才能ある声楽家を日本から同音楽院に送るため、同音楽院と共催している。オーディションの最優秀受賞者は同音楽院の1次試験が免除され、2次試験の受験資格が与えられる。合格すれば授業料や学生寮の費用にあたる5万ドルの奨学金が授与される。

 

このようにIFACは長年にわたりジュリアード音楽院と協力関係にある。フレミングもジュリアード音楽院の卒業生。こうした関係もありフレミングにゲストとして白羽の矢が立った。

 

日本芸術院会員のバリトン歌手でIFAC副会長の栗林義信は、「フレミングはいまは旬の世界の頂点に立つプリマドンナの一人です。よくぞ日本に来てくれます。私は2001年にメトロポリタン歌劇場が来日した際、『ばらの騎士』の元帥夫人を聴いています。ヨーロッパの歌い手にはない魅力があります」と絶賛する。

 

グラミー賞を4度受賞しているフレミングは子ども時代にはポピュラー音楽に親しみ、ジャズ歌手をしていたこともある。東京国際コンサートでは幅広いジャンルの歌声が聴けそうだ。演奏は今年1月に亡くなったクラウディオ・アバドの甥、ロベルト・アバドが指揮する東京シティ・フィル。

 

東京国際コンサートで目指す 歌唱芸術の普及と発展

栗林義信は、「今やオーストラリアの声楽家の学生は、みんなジュリアードに行きたがります。世界トップレベルの声楽教育が受けられるからです。ところが、日本の学生はみんなヨーロッパに行ってしまう。なぜなら、日本からジュリアードに留学する先例がほとんどないからです。だからこそ、IFACが設けたジュリアード音楽院への窓口は、日本の声楽界のレベルが上がる大きな一助となるはずです。実際、第1回オーディションの最優秀賞者で、ジュリアード音楽院をトップレベルで卒業した大西宇宙さんは、アメリカの数々のコンクールで優勝しています。彼のように、日本の声楽界を背負って立つリーダーが、本オーディションから排出されることを願います」と熱弁する。

 

そして、「IFAC主催で昨年で15回目の開催となった『東京大薪能』は、一般の方に、無料でプロの能楽を鑑賞して頂く機会を提供してきました。日本の伝統芸能である能楽の素晴らしさを、広く知って頂くためです。東京国際コンサートも同様に、広く一般の皆さんに世界水準の歌声を聴いて頂く機会を提供するものです。それが結果的にはオペラ芸術のファンを増やし、日本声楽界の発展につながると信じる次第です」と、本コンサートの意義を語った。

 

キリ・テカナワが出演した昨年の東京国際コンサート

ジュリアード音楽院の卒業生らも出演し多彩なプログラム

第1回東京国際コンサートは昨年9月10日(火)、なかのZEROホールで開かれた。「普通のクラシックコンサートはすーっと歌ってすーっと帰って終わりですが、普通じゃありませんのですいません」とマイクで客席に話しかける深見東州。これから謳うモーツァルトのオペラ「ドン・ジョヴァンニ」の解説を始めた。「ドン・ジョヴァンニは女たらしの最低の男で地獄に落ちて死んでいくのが『ドン・ジョヴァン二』」。さらにダ・ボンテ3部作の「フィガロの結婚」「コジ・ファン・トゥッテ」も”深見流"に説明する。「『コジ・ファン・トゥッテ』は恋人の貞操を試そうとする最低の内容」。しかし、「それに最高の音楽がついているのがモーツァルト。そんなにくそまじめに聴くようなものではありません」と笑わせた。

 

「ドン・ジョヴァンニ」より「さあ、窓辺においで」を歌うと、ニュージーランド出身のバス、"レボレロ歌い"のコナル・コードが登場。二重唱「おい、おどけ者、わしを困らせるなよ」を披露した。そして有名な「カタログの歌」。曲間には解説を入れ、衣装ではなくタキシードだが、演奏をしながらの歌唱に思わずオペラに引き込まれていく。

 

続いて「カタリ カタリ」「帰れソレントへ」というナポリ民謡、日本の「故郷」を披露。最後に2人でドニゼッティより「ああ! あられもなお炎がわしの体中を焼き尽くす」を歌った。栗林が「天性の美声」と称する深見の歌唱力と、世界的活躍を見せるコナルの歌声が響き渡り、第1部は幕を閉じた。

 

第2部は、ジュリアード音楽院声楽科の大学院生と卒業生が出演。最初に「セビリアの理髪師」より「私は町の何でも屋」を、伸びやかで張りのある声で歌ったのは大西宇宙。第1回ジュリアード音楽院声楽オーディションで最優秀賞を獲得し、同音楽院に入学。今後を期待されるバリトンの逸材だ。

 

ピッツバーグ・オペラなどで活躍するメレディス・ルスティヒと大西で「ドン・ジョヴァンニ」より「お手をどうぞ」、キム・ユジュンが「愛の妙薬」よりネモリーノの名曲「人知れぬ涙」などを歌い、最後はキムと大西がビゼー「真珠採り」よ「聖なる神殿の奥深く」。"未来のスター"たちに盛んに拍手が送られた。

「一般の人にクラシックを愛してもらうのはIFACのテーマ」

と半田晴久

第3部はキリ・テ・カナワのコンサート。その前にステージに登場した深見は「ジュリアード音楽院は単に音楽家を育てるだけでなく、音楽家のリーダーを育てる。大西君もジュリアードに行ってよりうまくなった。IFACは一般の人に高いレベルのオペラを広める趣旨がある。一般の人にどうクラシックを愛していただけるのかを考え、文化の交流、文化芸術の振興がこのコンサートのテーマ、IFACのテーマです」と話した。そして客席にいたジュリアード音楽院のジョセフ・Wポリシ学長を紹介した。

 

続いて華やかなピンク色のドレスで登場した キリ・テ・カナワに万雷の拍手が送られた。69歳とは思えない美貌だ。テ・カナワはニュージーランド・ギズボーん生まれ。ロンドン・オペラ・センターへ留学し、1968年、サドラーズ・Uウェルズ劇場の「魔笛」でデビュー。ウィーン国立歌劇場には「オテロ」のデズデーモナ役でデビューした。84年、グラミー賞最優オペラ録音賞。オペラは引退したが、コンサート活動は続けている。

 

「日本に戻れてうれしい日本は大好きな国です。今日招待されたのは本当にサプライズでした。半田様のやっていることは素晴らしいといつも思っていました。特に世界中の若い人たちにチャンスを与えている活動に感銘を受けています。私の財団でも同じようなことをしていますが、半田様に比べたら非常に小さなものです」と挨拶した。

 

コンサートは、モーツァルト「魔笛」のパミーナのアリア「ああ、私にはわかる、消え失せてしまったことが」で始まった。リヒャルト・シュトラウスの歌曲「明日!」やリストのドラマチックな「平和は見つからず」まで5曲を一気に歌いきった。続いてイギリス伝統音楽の「スカボローフェア」は芸術家曲のような香りを醸し出す。得意とするアルゼンチンの作曲家グアスタビーノの「なんて可愛いマドレセルバ」、最後はプッチーニの「ジャンに・スキッキ」より「私のお父さん」をしっとりと歌いあげた。年齢を感じさせないダイナミクス、美しいピアニッシモが観客を魅了した。

『MOSTLY CLASSIC』2014年7月号「東京国際コンサート 歌姫ルネ・フレミングをゲストに開催」より引用